世界には、驚くような方法で生み出される「一風変わったコーヒー」が存在します。最も有名なのはジャコウネコのふんから採取される「コピ・ルアク」ですが、今、それを凌ぐ希少価値で注目を集めているのが、タイで作られている「象のふんコーヒー」です。
「象のふんからコーヒー?」と耳を疑うかもしれませんが、実はこれ、象の体内の仕組みをフル活用した、理にかなった最高級のコーヒーなんです。
今回は、その不思議な正体から、1杯数千円もする驚きの味の秘密までわかりやすく解説します。
タップできる目次
象のふんコーヒー「ブラック・アイボリー」とは?

象のふんコーヒーとは、ひと言でいえば「象にコーヒーの実を食べさせ、その体内で発酵・排出された豆」を使用したコーヒーのことです。
正式名称は「ブラック・アイボリー(Black Ivory Coffee)」。タイ北部の象保護施設で生産されており、約30頭の象たちの力を借りて作られています。
「ふんから採る」という驚きのプロセスですが、じつは象の消化メカニズムを活かした立派な精製方法の一つです。
その唯一無二の味わいに魅了されるファンは世界中におり、現在ではコピ・ルアクをも凌ぐ最高級のレア豆として、非常に高値で取引されています。
15時間以上の熟成!象のふんコーヒーができるまで

厳選されたコーヒーチェリーの収穫
まず、原料となるのは高級なアラビカ種の完熟コーヒーチェリーです。
これに米やバナナ、塩などを混ぜ合わせ、象が食べやすい「特製ごはん」にして与えます。
象の体内での「天然熟成」
食べたチェリーは、15時間から長いときで70時間かけて象のお腹の中を通過します。
この長い時間をかけて、象の胃の中でゆっくりとコーヒー豆が発酵されていくのです。
手作業による丁寧な選別
排出されたふんの中から、未消化のコーヒー豆を職人が一つひとつ手作業で拾い集めます。
象が豆を噛み砕いてしまうことも多いため、綺麗な状態で残っている豆はごくわずかです。
徹底した洗浄と乾燥
採取された豆は、何度も何度も繰り返し水洗いされ、徹底的に殺菌・洗浄されます。その後、約4日間かけてじっくりと天日干しで乾燥。
こうして厳しい工程をクリアした豆だけが焙煎され、世界で最も高価なコーヒーへと生まれ変わります。
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象のふんコーヒーが美味しい理由と味

「象のふんから採れた豆」と聞くと味の想像がつきにくいですが、実はその美味しさにはしっかりとした理由があります。
1. 消化酵素が「苦み」をカットする
コーヒーの苦み成分の一部は、豆に含まれるタンパク質に由来します。
象がコーヒーの実を食べると、体内の消化酵素がこのタンパク質を分解し、その結果コーヒー特有のトゲトゲした苦みが取れて、マイルドでなめらかな口当たりに変化します。
2. フルーティーで複雑な香り
象はコーヒー以外にも、バナナやサトウキビといった多くの果物や植物を食べています。
それらと一緒に体内で長時間じっくりと発酵されることで、他の食材の甘い香りがコーヒー豆へと移ります。
こうして出来上がったコーヒーは、「チョコレートやスパイスのような香り」と、「トロピカルフルーツのような風味」になります。
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象のふんコーヒーは世界最高峰の価格!なぜそんなに高いのか?

ブラック・アイボリーが「世界で最も高価なコーヒー」の一つとされるのには、圧倒的な希少性とコストがかかっているからです。
収穫効率が低すぎる
象に33kgものコーヒーチェリーを食べさせても、無事にふんから回収できるコーヒー豆はわずか1kgほどしかありません。
象が豆を噛み砕いてしまったり、移動中に茂みの中で紛失してしまったりするため、製品にできる量はごくわずかしか残りません。
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高額な飼育コストと希少性
象1頭を健康に飼育するには、食費や医療費など多額の費用がかかります。
また、タイの限られた施設でしか生産されていないため市場に出回る量も極端に少なく、価格は1kgあたり約11万〜20万円以上で取引されることもあります。
高級ホテルで提供される場合、1杯あたりの価格は数千円から、時には1万円近くになることもあります。
日本ではまずお目にかかれない、まさに「選ばれし人のための贅沢品」と言えるでしょう。
また、この収益の一部は象の保護活動に充てられており、この高い価格には「象と人間が共生するための支援」という意味も込められているのです。
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コーヒー以外の象のふん活用方法
象のふんの活用法は、高級コーヒーだけにとどまりません。
象は1日に200kg〜250kgもの食事を摂り、そのうち約50kgをふんとして排出します。この膨大な資源を無駄にせず、地球に優しい形で再利用する取り組みが広がっています。
1. 栄養たっぷりの「堆肥」
最も一般的なのが、農作物を育てるための肥料(堆肥)としての活用です。
草食動物である象のふんには未消化の植物繊維が豊富に含まれており、土壌を豊かにしてくれます。
日本の一部の動物園などでも、この堆肥を農家に提供する活動が行われています。
2. ふんから生まれる「象のふんペーパー」

驚くべきことに、象のふんから「紙」を作ることもできます。
象のふんに含まれる良質な植物繊維を取り出し、洗浄・殺菌して煮詰めることで、温かみのある風合いの紙に生まれ変わるのです。
象1頭の1日のふんから、約115枚分もの紙が作れると言われています。
まとめ
象のふんコーヒーは、一見風変わりな作り方ですが、象の体の仕組みと自然のサイクルをうまく活かしたものです。
お値段はかなり張りますが、見かける機会があれば、一度試してみてはいかがでしょうか。
なお、有名なコピルアクのレビューもあるのであわせてご覧ください。
