コーヒーは多くの人にとって日常的な飲み物ですが、コーヒー豆がどのように栽培されているかご存知でしょうか。
コーヒー豆は、コーヒーの実(コーヒーチェリー)として木に実をつけます。
茶褐色のコーヒーからは想像できない、さくらんぼのような真っ赤な実で、その中の種を焙煎すると市販されているコーヒー豆になります。
この記事では、コーヒーの実の特徴からコーヒー豆になるまでについて詳しく説明します。
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コーヒーの実・コーヒーチェリーとは?

コーヒー豆とは、「コーヒーの実」の種子(タネ)です。
コーヒーは常緑樹(樹木)で、光沢のある葉を繁らせ、白い花を咲かせた後に緑色の小さな実をつけます。
収穫期を迎えると、その実はさくらんぼのように赤く熟すため「コーヒーチェリー」と呼ばれています。
実の中に入っている種子を取り出して焙煎すると、わたしたちが目にする褐色をしたコーヒー豆になります。
コーヒーの実の中はどうなっている?
コーヒーの実の内部は、果実や粘液、種子(コーヒー豆)を覆う薄い膜が重なっています。
次の断面図のイラストで詳しく説明します。
断面図をイラストで紹介

コーヒーの実は6層構造になっています。
外側から、外皮(果皮)、果肉、粘液(ミューシレージ)、内果皮(パーチメント)、銀皮(シルバースキン)、種子という構造です。
- 外皮(果皮):果実の皮の部分。ハリがあって苦みがある。
- 果肉:コーヒーチェリーの大半を占める、甘くみずみずしい果肉。
- 粘液(ミューシレージ):果肉の内側にある、とろりと粘り気のある液体(粘液)。
- 内果皮(パーチメント):コーヒー豆を保護する薄皮。
- 銀皮(シルバースキン):薄くほとんど透明な、コーヒー豆を最後まで保護する薄皮。
- 種子(コーヒー豆/生豆):いわゆるコーヒー豆のこと。多くは向かい合わせで2粒入っている。
コーヒーの実のどの部分がコーヒー豆になる?
コーヒーの実の中心から取り出した種子の部分がコーヒー豆です。
品種にもよりますが、1本のコーヒーの木から収穫できるコーヒーチェリーはおよそ3kg。
果皮や果肉などを取り除き、乾燥させた生豆(グリーンビーン)と呼ばれる状態になると、わずか500gしか残りません。*1
つまり、実際に収穫されたコーヒーチェリーのうち、コーヒー豆として世界で流通するのはわずか6分の1なのです。
コーヒーチェリーはどんな場所で栽培されている?

コーヒーの木は熱帯植物で、「コーヒーベルト」と呼ばれる北回帰線と南回帰線に挟まれた赤道付近の国で栽培されています。
コーヒーベルトとはコーヒーの栽培に適した地帯のことを指します。
赤道を挟んだ北回帰線と南回帰線の間にある熱帯地方で、北緯25度から南緯25度までの地域となります。
十分な雨量と気温がコーヒー栽培の条件
コーヒーベルトに属していることに加え、気温や降雨量などコーヒー栽培に適した環境条件が揃っていることも重要です。
具体的には、以下のような点が挙げられます。
- 乾期と雨期がある
- 十分な日当たりと適度な日陰
- 年間平均20℃の気温
- 肥沃で水はけの良い弱酸性の土壌
- 500m~2,500mの寒暖差のある高地
日本では、コーヒーの栽培に適した地域がほとんどないため、コーヒー豆は輸入に頼っています。
どのようにしてわたしたちの手に届いているのかイメージしにくいため、続いては、コーヒー豆がどのように栽培され、加工されているのかを説明していきます。
実がなるコーヒーの木にも花が咲く
コーヒーの木は種子植物なので、実をつける前に花が咲きます。
種子から発芽し、根を張り、花を咲かせるまでに、およそ3〜5年かかります。
どんな花が咲く?

コーヒーは小さな白い花を咲かせます。花びらは5枚です。
雨期を迎えると、コーヒーの花は一斉に開花し、農園を真っ白に染めます。
とても美しい光景ですが、その美しさを楽しめるのは2日間ほど。まるで雪が溶けるように儚く散ってしまうことから、世界三大コーヒーのひとつ、コナの産地ハワイ島では、この光景を「コナ・スノー」と呼びます。*2
どんな香り?
コーヒーの花の香りはジャスミンに例えられることが多く、甘く爽やかです。
この香りに誘われて蜂などの虫が受粉し、実をつけます。さらに9ヶ月ほどかけてコーヒーの実が熟し、収穫期を迎えます。
関連→コーヒーノキとは?1本から採れる豆の量などをバリスタが解説
コーヒーの実の収穫時期

コーヒーの実は乾期に収穫されます。生産地によって雨期と乾期の時期が異なるため、一年を通して世界各地で収穫されています。
同じ国内でも、標高の違いなどにより地域ごとに収穫期が異なることもあります。
赤道をまたぐコロンビアやケニアでは、1年に2度の収穫期があります。赤道直下の島国インドネシアでは、ほぼ一年を通してどこかの島で収穫期を迎えています。
関連→コーヒー豆の産地による特徴とおすすめを紹介【一覧表あり】
コーヒーの実の収穫方法
コーヒーの実は熟すとどうなるのか?

コーヒーの実は、熟すと赤くなることが多いです。品種によっては黄色やオレンジ、ピンクに近い色になることもあります。
他の果物と同じように、熟しはじめは緑色をしていますが、数ヶ月かけて徐々に黄色から赤へと変化します。
鮮やかなルビー色になったら、完熟して「収穫期」がおとずれたサインです。
味の特徴とは?

コーヒーの実は熟すと糖分を蓄え、甘くなって食べることができます。
実際、コーヒー産地ではサルやタヌキ、ジャコウネコなどの動物が実を食べています。
可食部である果肉は、種子(コーヒー豆)のまわりにわずかについている程度ですが、甘酸っぱくみずみずしいのが特徴です。
やや青っぽさのあるさくらんぼや、人によってザクロ、パプリカなどに似ていると感じるようです。
関連記事:世界一高価なコーヒー豆「コピルアク」の感想を正直にレビュー
コーヒーの実はどのような過程でコーヒー豆になるのか

熟したコーヒーの実は収穫され、さまざまな工程を経てコーヒー豆が取り出されます。この工程を「加工」もしくは「精製」と呼びます。
加工方法(精製方法)は、コーヒーの栽培地や気候によっても変わります。方法は多種多様ですが、共通しているのは「コーヒー豆を最良の状態で取り出す」ということです。
今回は、ブラジルやコロンビアなど世界的に生産量の多い国で最も一般的な「水洗式(ウォッシュト)」の工程を例に説明します。
関連→コーヒーの精製方法とは?ナチュラル、ハニーなど発酵で変わる味の特徴を解説
1.収穫
しっかり熟して色づいたコーヒーチェリーを収穫します。
収穫の方法は、人の手でひとつひとつ丁寧に収穫する「手摘み」と、専用の機械を使って効率よく収穫する「機械摘み」の2種類があります。
どちらの方法で収穫するかは、機械が入れない地理的条件や、農園の規模などによって異なります。
収穫されたコーヒーチェリーは水洗式加工場に運ばれ、コーヒーの実は搬入用のタンクへ移されます。
2.コーヒーの実からコーヒー豆を取り出す

その後、コーヒーチェリーは洗浄され、果肉除去機を使って果皮と果肉が取り除かれます。
3.コーヒーの粘液を除去する
さらに、コーヒー豆の周りに残る粘液(ミューシレージ)も取り除きます。
伝統的な方法では、発酵タンクの中で水に浸けて、自然発生した酵素で粘液を分解させて発酵除去します。
最近では、タンクを使わずに「粘液除去機」で、水の使用量を最小限に抑えて粘液を除去する方法が増えています。
4.コーヒーの生豆を干す

コーヒーの実の内部は6層構造になっていることは前述のとおりですが、ここまでの段階を経て、コーヒー豆は内果皮(パーチメント)と銀皮(シルバースキン)の2重の薄皮に包まれた状態になっています。
天日干しや乾燥機などで乾燥させることによって、この薄皮を取りやすい状態にします。
じゅうぶんに乾燥させたコーヒー豆は、風味を深めるためにいったん倉庫でねかせられます。
5.コーヒーの生豆の薄皮を取る

最後に、残った薄皮の皮むきをします。この際、パーチメントが完全に取り除かれます。(シルバースキンの一部は残ります)
この状態が「生豆」と呼ばれる、焙煎前の最終段階となります。
生豆は品質ごとに選別し、グレード付けされ、生産地から各国へ運ばれていきます。
6.焙煎する

生豆は各国の焙煎工場で焙煎され、わたしたちが目にする茶色や褐色をしたコーヒー豆の姿になります。
メイラード反応やカラメル化などの焙煎による化学変化によって、甘み、コク、苦み、コーヒーの香りといった風味が生み出されます。
苦みや酸味のバランスは焙煎度合いによっても変化します。
焙煎度合いは大きく分けて、浅煎り、中煎り、深煎り、極深煎りの4つに分けられます。
焙煎度合いについて知りたい方は、こちらの記事で8段階のロースト基準など詳しく解説しています。
関連→コーヒー豆のローストや焙煎度合い・焙煎方式ごとの味の違いを解説
コーヒーの実は再利用できる

コーヒーの実は食べることができますが、コーヒー豆を取り出した後は廃棄されることが多いです。
可食部は少ないものの、果実に多くの水分を含んでいるため、果皮と果肉だけでコーヒーチェリーの総重量の約80%以上を占めています。*3
つまり、コーヒー豆を加工する過程で多くの廃棄物が生み出されているということです。
近年では、コーヒーの実にポリフェノールや食物繊維、鉄分などの多くの栄養素が含まれていることが注目され、積極的な再利用が進められるようになりました。
コーヒー豆を取り出した後の果肉は肥料に使用される
コーヒー生産地で行われている再利用のひとつが、肥料としての再利用です。
果皮と果肉を乾燥・発酵させ、コーヒーの木の周りに撒いたり、土と混ぜて発酵させ農業用の肥料や堆肥にされています。
乾燥させて粉末状にしたコーヒーフラワーとして

長年の研究により、近年では飲食用として再利用されることも多くなりました。
乾燥させて粉末にした「コーヒーフラワー」が開発され、販売されています。
コーヒーやチェリーのような味はしないため、小麦粉と同じようにパンやお菓子作りに使えます。
加えて栄養価も高いため、海外でも注目が集まっています。
乾燥させて紅茶のようにしたカスカラ(コーヒーティー)として

果皮や果肉を乾燥させた「カスカラ」は、シロップやお茶の原料として再利用されています。
カスカラの名前は、スペイン語で「籾(もみ)」を意味する「cáscara」に由来しており、これを工夫して商品化したものとして「カスカラシロップ」や「カスカラパウダー」があります。
カスカラは、そのまま淹れるとお茶としても楽しめます。
これは「コーヒーチェリーティー(コーヒーティー)」と呼ばれ、自然な甘みと独特の酸味が楽しめます。
ハイビスカスティーやローズヒップティーに似た華やかな香りで、すっきりとした味わいです。
【コーヒーの実の味が気になる方必見】スタバで飲めるコーヒーチェリーのドリンク

スターバックスでは、定期的にカスカラを使った商品を販売しています。
過去には「クラフテッド コーヒー ジェリー フラペチーノ」や「アイスムース カラメル ラテ」など、カスカラから作った砂糖(カスカラシュガー)をトッピングしたビバレッジが登場しました。
2023年10月には、中目黒の「STARBUCKS RESERVE® ROASTERY TOKYO」で、カスカラシロップとカシスシロップを合わせた「カスカラ カシス フィズ」が登場しました。
カスカラの味が気になる方は、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。
ショートサイズのスターバックスラテ1杯にコーヒーチェリーは何粒必要?
最後に、スターバックスにまつわる興味深いコーヒーチェリーのトリビアをご紹介します。
ショートサイズの「スターバックス ラテ」を1杯作るのに必要なコーヒーチェリーの数は、25粒なんだそうです。*4
ショートサイズには、エスプレッソが1ショット(約30cc)が入っており、この1ショットには、およそ6.5g〜10gの焙煎したコーヒー豆が使われます。
コーヒーの品種などによって差はありますが、1本のコーヒーの木から収穫できるコーヒーチェリーは約3kg。
そこから加工して生豆を取り出すと重量は約500gになり、さらに焙煎されて水分が抜けると400gほどになってしまいます。*1
つまり、10gのコーヒー豆を使用する場合、1本のコーヒーの木からスターバックス ラテは約40杯分しかできないのです。
コーヒーの実「コーヒーチェリー」が美味しい一杯に繋がる!
コーヒーとは、生産者によって大切に育てられた作物です。
わたしたちは、コーヒーの実(コーヒーチェリー)から取り出した種子(コーヒー豆)だけを焙煎して粉にして、淹れて楽しんでいるのです。
コーヒーの実について知ることで、当たり前のように飲んでいるコーヒーが、長い歳月と多くの手間をかけてわたしたちに届いた貴重なものであることに気づくことができます。
コーヒー果肉を再利用したカスカラシロップやカスカラシュガーをプラスしてみたり、毎日のコーヒーを、より深く味わってみてはいかがでしょうか。
参考文献
*1 UCC|コーヒートリビア「コーヒーの木1本で何杯分のコーヒーがとれる?」(2026年4月14日閲覧)
*2 UCC|コナスノーが見られる季節です! -UCCハワイ農園から-(2026年4月14日閲覧)
*3 STARBUCKS STORIES JAPAN|コーヒーストーリーvol.23「できることから1つずつ 姿をかえるコーヒーの果実」(2026年4月14日閲覧)
*4 STARBUCKS STORIES JAPAN|コーヒーストーリーVol.14「コーヒーチェリー25粒が織りなすクリスマスの魔法」(2026年4月14日閲覧)


